自営業の夫と離婚する時に知っておくべき5つのこと

自営業の夫と離婚をする時には、財産分与や養育費をどのくらいもらえるのかが気になるところです。
また、養育費が支払われなくなった場合に会社に勤めているなら給与の差押えができますが、自営業となると差押えができるかどうかも心配になってきます。
夫が会社勤めなのか自営業やフリーランスなのかで離婚する際に注意しなければならない事も違ってくるでしょう。
この記事では自営業やフリーランスの夫と離婚する際に知っておくべきことについて解説していきます。

 もくじ

1:財産分与はどうなる?

自営業者の場合

夫が法人化していない個人事業主として事業を営んでいる場合は、事業のための口座や資産も原則として財産分与の対象となります。
逆に事業用の負債(借金)がある場合は借金を差し引いた額が財産分与の対象となります。
妻が専業主婦であっても、家事や育児などで配偶者をサポートすることで事業用財産の形成に貢献しているということになるからです。

会社を法人設立している場合

夫が経営している会社が「株式会社○○」や「有限会社○○」のように、法人化された会社の場合は、原則として、会社名義の資産は財産分与の対象とならないとされています。
法人と個人は法律的には「別人格」とみなされるためです。
しかし、税金対策などで、家や車などほとんどの資産を会社名義にしており、日常的に会社名義の口座から生活資金を引き出していた場合や、夫婦で会社を運営している場合など、
法人とはいえ、実質は夫婦の財産としてお金を使っていた場合は、会社名義の資産も財産分与の対象となる可能性があります。
夫が会社を経営している場合は、知り合いの弁護士にすでに夫が財産分与について相談をしているという可能性も考えられますので注意が必要です。
もし夫が弁護士に依頼をした場合は交渉が不利になることもありますのでこちらも弁護士さんに依頼をすることを考えても良いでしょう。

2:養育費はどうなる?

夫が自営業の場合は養育費の計算も変わってきます。
裁判所から公開されている養育費算定表を確認すると、収入が「自営」と「給与」に分かれていますので「自営」のほうで確認をしましょう。
総収入が同じ金額であれば、給与所得者よりも自営業者の方が、算出される養育費が高額になっています。
また、収入については自営業者の場合は確定申告書の「課税される所得金額」を養育費算定表に当てはめて確認をしましょう。

3:年金分割はどうなる?

年金分割の対象となるのは厚生年金部分のみです。
したがって、自営業の夫婦がともに国民年金にしか加入していない場合、年金分割はできません。
もし、結婚している期間で夫が会社勤めをしていた期間があるようでしたら、厚生年金部分を年金分割することは可能です。

4:養育費の差押えはできるのか?

養育費の不払いが生じた場合、強制執行認諾文言付の離婚公正証書を作成していれば、強制執行(差押え)の申立ては可能です。
しかし、自営業者は「給料」をもらっていないため、給料の差押えができません。
いざ、差押えをしようと思っても、裁判所が相手の財産を特定してくれるわけではありませんので、
差押えをする場合は相手の財産を特定してから申し立てをする必要があります。
差押えができるのは債務者名義の財産であることから、相手方名義の預金口座を特定できていれば、それを差し押さえる方法が考えられます。
実際のところ、差押えをしようとした時にはすでに財産を隠している可能性もあり、相手方の財産を特定するのは難しくなります。
交際相手や両親名義の口座に資産を隠す可能性もあるので注意が必要です。
夫の不倫が原因で離婚になった場合は、不倫相手名義の口座にお金を移動させて慰謝料や養育費からも逃げるという悪質な手口もありますので、
離婚時には一括で払えるお金は先にもらっておくというのも一つの方法でしょう。
また、お金を払わず逃げる可能性があるのであれば早めに弁護士さんに相談をすることをおすすめ致します。

5:夫が妻を雇用していた場合はどうなる?

夫が個人事業主として、または法人として、妻を従業員として雇っていた場合、離婚のみを理由として妻を解雇することは違法の疑いがあります。
労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とす る」と定めています。
夫と妻という関係性であっても、雇用契約である以上は、解雇権濫用の法理が適用されます。
ましてやこれから離婚をする場合はなおさら、労働者としての妻の権利を保護すべき場面であるといえるでしょう。
しかしながら実際のところは、妻が離婚後も従業員として夫の事業を手伝い続けることは現実的ではないところでしょう。
そのため、夫が妻に対して「解決金」としてお金を支払ったり、解決金相当額を財産分与に上乗せしたり、
妻が次の仕事を見つけるまで生活費を支払う等を条件にして、妻に退職をしてもらう場合もあります。

6:まとめ

自営業の夫と離婚する場合は、養育費や慰謝料など長期的な支払いが不払いになった時に差押えができるかどうか?が重要なポイントになります。
悪質なケースでは不倫相手の口座にお金を移動させて財産を隠し、強制執行から逃れようとすることもあります。
こうなっては財産を特定するのは難しく、強制執行ができないことになりますので早めに弁護士さんに相談するようにしましょう。
また、離婚時の財産分与で調整するなど、もらえるうちにもらっておく方向で考えるのも一つの方法と思います。

 

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