離婚公正証書を作成する場合は、もよりの公証役場に夫婦二人で出向いて作成をするのが原則です。
しかし、夫婦が既に別居しており遠く離れた場所に住んでいる場合や、
平日の昼間にどうしても夫婦二人の予定が合わないこともあるでしょう。
そのような場合は代理人として夫または妻の代わりの人が公証役場に出向いて公正証書を作成することができます。
しかし、本人の代わりに代理人が作成することで後にトラブルになる事もあります。
ここでは、代理人を指定する場合に注意すべき事を解説していきます。
もくじ
1:原則は夫婦二人が公証役場に出向くこと
公正証書は強制執行認諾が入ることで「約束を守らなかった場合は財産を差押えされることもある」と約束をするものです。
そのため、公証役場で強制執行に関する説明をうけて、公証人が公正証書の全文を読み上げるのを目の前で聞いて、
実際の公正証書を見た上でしっかりと確認して署名押印するものです。
公証役場に出向くことで「大事な書面を作った」「約束はしっかりと守らなければならない」という自覚もでるものです。
離婚の公正証書は離婚条件を決めた大切な書面です。
それだけ重要な書面ですので、何とか都合をつけて夫婦二人で公証役場に出向く方法を第一に検討していただきたいと思います。
2:ただ行きたくないという理由では認められない
公正証書は大切な契約の書面です。自分が結ぶ契約なのですから、自分が出向いて作成をすることは、いわば当たり前の事とも言えます。
基本的に代理人を立てる場合は、以下のような特別な理由がある場合のみと考えてください。
・遠方で来ることができない・モラハラ等が原因で、配偶者の顔を見ることに抵抗がある |
夫婦のどちらかが「面倒だから行きたくない」という理由では、
公正証書に書かれた内容を守る気持ちがそもそもあるのかも疑わしい状況です。
全国の公証役場の中には特別な事情がない限り代理人での作成を認めないところもあるようです。
ちなみに、札幌の公証役場は代理人での作成もある程度柔軟に対応していただけます。
3:公正役場の滞在時間はどのくらい?
夫婦二人で公証役場と原稿のやりとりをする場合は、かなりの時間を要する場合もあります。
事前に原稿のやりとりをせず、当日に「これを公正証書にしてください」とお願いした場合は丸一日かかったり、
込み合っていたりすると当日に完成しない場合もあるかもしれません。
当事務所にご依頼いただく場合は、公証役場予約日までに公証人と事前に原稿の打ち合わせを済ませておきますので、
夫婦の役場滞在時間は長くても1時間、早ければ30分程度で済みます。
職場が近ければお昼休みに作成する方もいますし、朝一番で仕事前に役場に行かれる方もいらっしゃいます。
お時間がない方は専門家へ作成サポートを依頼することをおすすめいたします。
4:代理人が役場に行く時に必要なもの
どうしても遠方等の理由から、本人が公証役場に行けない場合は委任状を作成して、ご本人様に実印で捺印いただき、印鑑証明をいただきます。
委任状には作成する公正証書の原稿が添付されていますので、
「添付されているとおりの公正証書を作成するということを代理人にお願いしますよ」
という委任状になります。
その為、委任状作成前までに夫婦間で公正証書に記載する内容を決めておく必要がありますし、
公証人と原稿の打ち合わせを済ませておく必要もあります。
委任状の郵送日数やご本人様が印鑑証明を取得する時間も考慮して、公証役場を予約する日にちは余裕をもって指定すると良いでしょう。
5:委任状を書いてもらう時に気をつけること
妻が公正証書を作成すると言って、夫は好きにすればいいと言っているような場合は委任状を作成する際に注意が必要です。
妻が、
「この前約束したことが文章になっているだけだから名前を書いて実印だけ押してくれればいい」
と詳しい説明をしないまま、署名と捺印だけを求めた結果、後にトラブルが発生したというケースもあります。
委任状を作成する際は、必ず公正証書の全文に目をとおしていただき、
約束を守らなかった場合は強制執行される場合もあるという事をしっかりと説明して理解いただく必要があります。
6:代理人は誰でも良いの?
代理人はどなたを指定しても大丈夫です。
ご本人様が信頼をおける方が一番良いと思います。
ご本人様の両親や兄弟姉妹の方を代理人とされる方もいらっしゃいます。
当事務所では特別なご事情がある場合はご本人様の代理人をお引き受けすることも可能です。
お困りの方はご相談ください。
7:代理人が作成すると作成時に交付送達ができない
裁判所で強制執行の手続をするためには、
債務者(養育費等の支払い義務者)へ公正証書が渡されていることを証明する送達証明書が必要になります。
これを交付送達といいます。
通常の場合は債務者へ郵送で行われますが、公正証書作成のために
債務者本人が公証役場に出向いた場合に限って「公証人による交付送達」という方法で送達手続きをすることができます。
この方法は公証人が債権者の面前で債務者に公正証書の謄本を手渡しすることで、
送達手続を終えたものとみなすとする制度です。
債権者からの金銭債務の支払いが滞ったときには、速やかに強制執行の手続に入ることができますので、
夫婦二人が公証役場に行く場合はこの手続きも同時に済ませたほうが良いものです。
しかし、代理人が作成に役場に行く場合は債務者本人がいませんので、公証人による交付送達ができません。
希望する場合は特別送達という方法で債務者本人の住所へ公正証書の謄本を郵送し、
ご本人に受け取ってもらうという手間が発生します。
離婚・夫婦問題でお悩みの方はお一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。