子供がいる離婚でまず考えるのは養育費の金額でしょう。
養育費の相場は裁判所が公表している養育費算定表で確認して決めますが、
養育費を1円も払いたくないと主張する父親がいるのも事実です。
厚労省の平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果によると、驚くことに離婚時に養育費の取り決めをしていない夫婦は54.2%との事です。
子供がいる離婚の半数は父親が養育費を支払っていないという状況です。
それでは、離婚の話し合いで夫に「養育費は絶対に払わない」と言われた場合にどのように対処すれば良いのか確認していきましょう。
1:養育費の取り決めをしていないのはなぜ?
養育費の取り決めをしていない夫婦のすべてが父親が支払いを拒否しているということではありません。
では養育費をもらっていない理由はどのようなものがあるのでしょうか?
離婚後は夫と一切かかわりたくない
夫婦の関係がとても悪い状態で離婚となると、
妻も夫もお互いに離婚後はもう顔を見たくもないし会話もしたくない。という状況もあります。
毎月養育費をもらうという事は、毎月「今月は振り込まれるのか?」と気を揉むことになりますし、
もし振り込まれなかったら憤慨することになるので養育費をもらう事がとてもストレスと感じる方もいます。
また、養育費をもらう事で「お金を払っているんだから」と元夫からの要求が増えることを懸念する人もいるでしょう。
このような理由から、養育費をもらう事のメリットよりも、デメリットのほうが大きいと感じ、養育費はもらわないと決断する妻も少なくないのが現状です。
離婚後に子供に会わせないから養育費はいらない
夫の不貞行為やDV、モラハラなどが離婚原因の場合は、離婚後は子供に会わせたくないと考える方もいます。
面会交流と養育費はどちらも別々の権利ですので、本来は養育費はいらないから子供に会わせないという事は成り立ちません。
しかし、子供に会わなくてもいいから養育費を払いたくないと考える父親がいるのも事実です。
養育費を払いたくない父親と子供に会わせたくない母親の意見が合致した場合、
「養育費はいらないから子供には会わせない」という約束が成り立ってしまうケースもあります。
夫に養育費を支払う経済力がない
養育費はほしいけれど、お金にだらしない夫だからどうせ支払ってくれなくなる・・・
と考え、すぐにもらえなくなるなら最初からいらない。と考える方もいます。
夫の借金やお金の使い方が離婚理由であったり、転職ばかりを繰り返し定職に就かない場合などは、
毎月の養育費を決めたところで振込がないと催促の連絡をしなければならず、
それがストレスになりすごく嫌な思いをするから養育費はいらないという決断です。
養育費の決め方や請求方法を知らずに離婚をした
夫に養育費を支払う必要がない独自の理論を延々と毎日聞かされるうちに、
自分は養育費がもらえないんだ・・・と勘違いしてよくわからないまま夫に流されて養育費の約束をせずに離婚をした。という方もいます。
「養育費はいらない」と一筆書かされたという酷いケースもあります。
2:夫が養育費を払わないと言っている理由は何か?
結論から言いますと、夫がどんな事を主張しても養育費を払わなくて済むというケースはあまりありません。
では、どうすれば良いかというと、まずは、夫が養育費を払いたくないと思っている理由を聞いて話し合いをすることが大切です。
養育費の「権利」や「義務」の話をしたところで、
養育費は払わなけばならないものとわかっていて「払わない」と言っている人の心を動かすことは難しいです。
最悪の場合は離婚後に連絡先を変え、仕事を転々とされて給与の差押えも難しく、
結局逃げたもの勝ちという状況になる場合もあります。
そういった最悪のパターンを回避するためにも最初から喧嘩腰で戦うのではなく、計画的に話し合いからはじめるのが吉です。
離婚するならどうせ子供と会えないから養育費は払わない
妻が子供との面会交流に消極的な場合は「どうせ子供に会わせてもらえないから」と養育費の支払いを拒否するという場合もあるでしょう。
そのような場合は離婚協議書や離婚公正証書で面会交流について約束をすると伝えて、
面会交流をきちんとすることをアピールしましょう。
「子供には会わせないけど養育費は払ってね」はNGです。
父親が養育費を拒否できないのと同様に面会交流も拒否できない権利だということを念頭に置いて考えましょう。
お金がないから払えない
借金がある夫は養育費を払うお金がないと言うこともあるでしょう。
しかし、養育費はどの支払いよりも優先して払うべきお金です。
家賃や光熱費、支払で給料がなくなるのではなく、養育費を払うにはどの支払いを削るのか?を考えなくてはなりません。
「権利」「義務」という言葉で養育費算定表を見せるのではなく、
まずは月に1万円でも2万円でも支払いができないのか?ボーナス月や子供のお誕生月には多く払えないか?等の交渉をしてみましょう。
妻から切り出した離婚だから払わない
夫は離婚したくないと考えている場合「養育費は払わない」と妻を困らせる場合もあります。
夫からすると、最愛の妻と子供と離れて暮らすことになり、金銭的な負担を負うとなると踏んだり蹴ったりな状況です。
「お前が切り出した離婚なんだから」と養育費を盾にして離婚を拒否された場合は財産分与で調整できないかを検討しましょう。
夫に離婚事由がなければ、夫が離婚を拒否すると離婚が難しくなるのが現実です。
財産分与で夫に有利になるように調整をして養育費は算定表の金額でもらうというのも一つの方法でしょう。
妻の意見には絶対に従わない
どんな事でも妻の提案や意見はぜったいに認めないという夫もいます。
モラハラ気質の夫の場合はとにかく妻の意見は全面的に拒否をするという事もあります。
そのような場合は、夫婦二人での話し合いは難しい状況ですので、
両親や兄弟姉妹に同席してもらっての話し合いや、弁護士さんにお願いしたり離婚調停の場で話し合う事も考えましょう。
妻の意見は全部否定するけれど、調停で決まったならそれは守るというタイプの夫もいます。
意見を全面否定されている時点で二人での話し合いはまず難しいと考えたほうが良いでしょう。
3:養育費は離婚公正証書にしましょう
養育費を払わないと一度でも口にした夫は、養育費の支払いに消極的であるということです。
養育費を決めたという証拠をきちんと残すことと、支払をしてくれなくなった場合は、
給与を差押えできるように離婚公正証書を作成しておくことをおすすめ致します。
しかし、そもそも養育費を支払いたくない夫が、
離婚公正証書を作りに一緒に公証役場に行くのか?というところも難しい課題ですが、
面会交流や財産分与などで夫に有利になる部分があれば、
その項目を強調して「離婚公正証書を作ることはあなたにもメリットがある」と説得するのが良いと思います。
離婚・夫婦問題でお悩みの方はお一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。